ひめじ芸術文化創造会議
大阪府堺市に2019年10月1日にオープンしたばかりの堺市民芸術文化ホール(愛称「フェニーチェ堺」)の視察を10月20日に行いました。
概要
大阪府堺市に2019年10月1日にオープンしたばかりの堺市民芸術文化ホール(愛称「フェニーチェ堺」)の視察を10月20日に行いました。
2005年に隣接の美原町と合併し、その後政令指定都市となっている堺市は、人口約83万人、面積149.82km2の大都市です。
今回視察した堺市民芸術文化ホールは、老朽化に伴い堺市民会館(1965年〜2014年)の跡地に建て替えられたものです。
2021年開館予定の姫路市文化コンベンションセンターと比較すると、元々あった古い劇場施設の跡地という限られた空間の中で建設している点が異なります。
また、コンベンション機能を備えた文化ホールとしてではなく、純粋に芸術文化ホールとしての機能に限定されている点についても留意しておく必要があります。
大ホール
メインとなる大ホール。
座席規模は姫路市文化コンベンションセンターと同等の2000席ですが、客席の配置については、姫路市の新施設が3層であるのに対して、フェニーチェ堺の大ホールは4層。少し高く積み上げた感じです。
姫路市の新施設は元々の設計では4層でしたが、音響に配慮した上で安全面や利便性、コストの観点から3層に変更されました。
敷地面積に制限があるため、客席を上に積むことで、客席とステージが離れすぎない設計になっていました。(この日は第1層の前列を地中に沈めてエプロンステージを出していたので、写真はさらに近く見えています)
舞台(框)からの距離は第1層(1階席)の最後部で約30m、第4層(4階席)の最後部でも約35mで、演者の表情が十分に見ることができる距離を維持して居られます。
なお、姫路市文化コンベンションセンターの大ホールは、第1層の最後部が32mになるようです。
また、第4層の座席は折りたたみ式ステップ(足置き)付きの高い座席を使用することで、前列の観客が視界を妨げにくいようになっています。
この仕組みについては、姫路市の第2・3層の後部座席でもコストによっては採用しても良いのかもしれませんね。
舞台はほぼ正方形で、上手袖はほぼ間口と同じだけの広さが取られています。恐らくスペースの都合でしょうが下手の袖はあまり間口がありません。姫路市文化コンベンションセンターの場合は、中ホールが同様の構造になっています。大ホールは両袖とも広く取られていますので「このあたりは姫路が勝ってるな」と……(笑)
上手奥の搬入口は、ガルウィング式トラックの荷台と大体同じ高さになるように設けられています。(トラック2台が並んで停められます)また、搬入口と舞台とは防音のため二重扉で仕切られています。
これについては、姫路市文化コンベンションセンターにも同等の設備が備わるはずです。
操作盤や装置類なども見せていただきました。他の施設と比べると少し小ぶりのように感じましたが、「最新の設備を入れています」とのことでしたから、こういったものはどんどん高性能・小型化しているのかもしれません。
(今回の視察には、こういうものに詳しい篠原副代表がスケジュールの都合で参加できなかったのが残念でした……)
ホワイエ
ホワイエは、木材を使った温かみのあるデザインでした。
外の明かりを取り入れた設計で吹き抜けで明るいもの。特に施設の東側は公園・駐車場が併設されていて程よく目隠しの役割を果たしているので、低層階の東面についてはガラス張りになっています。
また、楽屋に自然光を取り入れるため、中庭なども作られていました。(姫路市文化コンベンションセンターも同様の理由で楽屋から見える中庭が設けられるはず……)
姫路市でもよく話題に上がるホワイエ内のカフェは、フェニーチェ堺にも設置されていました。
満員御礼の観客全員が殺到するとパンクしそうではありますが、その辺り……座席数とカフェの規模については、姫路でもまだディスカッションの余地があるかもしれません。
ホワイエには他に注目すべきもの……実は私たちが姫路市の新施設にも採用して欲しいと前々から打診していた、まさにそのものがありました。それは地元企業・団体・個人からのスポンサーシップの仕組みです。
フェニーチェ堺のホワイエには、企業からは「プラチナ(1000万円)」「ゴールド(500万円)」「オフィシャルサポーター(100万円)」の寄付額に応じてネームプレートが貼られていました。団体・個人からの寄付は一口5万円だそうです。
そして、それぞれの金額・口数に応じて座席にもプレートが貼られる仕組みです。これは企業や市民の施設に対する「我が事としての愛着」を醸成するためにはとても有効だと思います。
ぜひ、姫路市でも採用していただきたいものの身近な実例として紹介しておきます。
その他にも姫路市に提案したものが採用されていた実例がありました。
通り抜け型の女性用トイレです。ただし、これについては姫路市でも(私たちの提案以前に)検討を行ったけれど、建物の構造・動線の都合で見送ったとのことでした。
最近取り入れられていることの多い「離れたところから個室の空き具合がわかるプレート」については、姫路市でも採用されるものと期待しています。
大スタジオ
ホールの舞台とほぼ同じ寸法の大スタジオを第3のホールとしても利用できるようにする、というアイデアは姫路市でも採用されるようです。
その一隅の壁は全面が表面パネルを折りたたむことができ、その中には稽古用の鏡が設置されていました。(これもまた、姫路市でも当然採用されるものと期待しています)
ほぼ正方形の部屋のどこにステージをおいても良いように、自由な配置ができる格子バトンが天井に貼られていました。
個人的には、正方形で完全に外からの光を遮断する部屋なら、どこにステージをおいても同じだろうから、自由に配置できる必要があるのかな……と思いました。できて困ることはないでしょうが、コスト次第では不要かもしれません。
文化交流室
会議や美術展示ができる部屋も併設されていました。この日は、ボタニカルアート(植物の絵)の展示が行われていました。
姫路市文化コンベンションセンターの場合は「コンベンション会場」として、この種の会議室がさらに充実するものと期待しています。
ディスカッション
堺市の職員の方や施設管理の担当者(堺市文化振興財団)の方に、(当日、利用されていた小ホール以外)ほとんどの部屋・設備を隈なく案内していただき、その上で簡単な質疑応答にお付き合いいただきました。
劇場併設のレストラン「テアトロ ポンテベッキオ」のことも伺いました。
この内容については、別の記事として掲載される予定です。
お礼
今回の視察については、堺市選出の衆議院議員・岡下昌平氏はじめ事務所スタッフの皆さまに大変お世話になりました。また、堺市 文化観光局 文化部の松下幸治さま、公益財団法人 堺市文化振興財団の中野郁代さま、柴坂哲也さまにも快くお迎えいただいて、感謝の念に堪えません。
末筆ながら、御礼申し上げます。
中野 郁代 (公益財団法人 堺市文化振興財団 堺市民芸術文化ホール担当部長)
柴坂 哲也 (公益財団法人 堺市文化振興財団 堺市民芸術文化ホール担当課長)
<ひめじ芸術文化創造会議>
月ヶ瀬 悠次郎(代表) 芳賀 由紀(事務局長) 高巣 恵 伊勢田 駿佑 穐田 佳久