実施レポート/「ぷちたぷち」生成AI体験講座への講師派遣
公開日時/2025年12月06日

文:月ヶ瀬悠次郎 
2025年12月3日(水)、まちのぷちたぷち(姫路市呉服町/認定NPO法人コムサロン21内)において「デザイン屋さんが生成AIで音楽とか作ったりしてるのを見ながら『へー』っていう会」が開催され、当会の月ヶ瀬悠次郎代表と上田成昭幹事が参加した。
2025年12月3日(水)、まちのぷちたぷち(姫路市呉服町/認定NPO法人コムサロン21内)において「デザイン屋さんが生成AIで音楽とか作ったりしてるのを見ながら『へー』っていう会」が開催され、当会の月ヶ瀬悠次郎代表と上田成昭幹事が参加した。
本講座は、認定特定非営利活動法人コムサロン21が運営する姫路市ひきこもり支援推進事業「ぷちたぷち」からの依頼で行われた。「ぷちたぷち」ではひきこもり状態の方の社会復帰のためのサポートを行っており、月に一回程度の体験型講習を実施している。当会からも講師派遣を行っている。
今回は生成AIによる文書制作や音楽制作の様子を紹介し、その工程を共有・実践する形式で行われた。また生成AIの課題や問題点なども併せて解説された。
月ヶ瀬悠次郎代表からのコメント
姫路市ひきこもり支援推進事業「ぷちたぷち」の企画に当会が協力するようになって4年。写真やパステル画、書道や楽器演奏、朗読などの体験講座のお手伝い以外にも緩やかな座談会なども開催していただいて、参加者とも深く打ち解けた場が持てるようになってきたように思います。
以前に私が担当した会のときにもお話しましたが、「居場所」というのは相互に作り合うものだと、この企画を通じて強く思うようになりました。教育関係の方はよく「教えることは学ぶことだ」などといいますが、居場所づくりの活動も実は居場所を作ってもらうことであったりもするのだと思います。
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今回配布したミニ冊子『つきがせさんのあたまのなか・2』 今回の講座テーマである「生成AI」についても、同じようなことを感じています。人にあらざる生成AIというもののことを深く考えれば考えるほど、人というものの本質が見えてくるように思います。
かつてある宗教家の方から「生成AIの身体性」の議論をうかがったことがあります。身体を持たない生成AIは、人間とは全く違う存在だ、と。私たち人間の思考は大部分をその身体性に根ざしているところがありますが、生成AIはそうではないということです。それゆえに、生成AIの回答は人間のそれとは一致しない部分があるのだ、と。
このことは、私なりにアレンジして講座の中でもお伝えしました。
モータル(死すべき存在)である人間の場合は、いい加減な仕事をすると信頼を損ね、共同体から排除され、衣食住を確保することができなくなり、最終的には「死」という最大のペナルティが待っています。これが人間の「責任」を裏付けるのです。
しかし生成AIは身体性がないゆえに死を恐れません。彼らは叩かれることも、蹴られることも、飢えることもありませんし、電源を切られることも、プログラムを破壊されることも恐れはしません。つまり、彼らには「(身体的な)罰」が存在しないので、「責任をとる」ということもできないのです。
逆にいえば、「どれだけAIが進化しても奪われない人間の仕事」とは「責任をとる」ということを含めた、その人の身体性やモータリティに依拠した活動なのかもしれないなと思います。
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配布冊子を眺める参加者 さて、講座では生成AIについての概論(専門的な話ではなく、ユーザー目線でのゆるいお話)……例えば「生成」AIとは何か、マルチモーダルとはどういうことか……など、簡単に解説を行いました。冒頭、参加者に尋ねたところ、大半が「まったく使っていない」「ほとんど使っていない」ということでしたから、枝葉の技術な議論よりは「月ヶ瀬がどういう時に使っているのか」という事例紹介を中心におこなうことにしました。
といっても、前回と同様に参加者の手元にはミニ冊子を配布しており、そこにデザイナーとして私が日ごろどういう風に生成AIを使っているかの具体的事例を掲載していましたので、講座の中ではそこに書かれていないこととして「ChatGPTのカスタムGPT機能を用いて、芸文会議のレポート記事の下書きを一問一答形式でつくらせる実演」を行いました。ワープロソフトを開いて、一文字ずつキーボードに打ち込みながら推敲するという、従来のようなやり方とは全く違うスタイルで文章ができるのは、参加者にとっては新鮮なことだったようです。
講座内で共作した「ぷちたぷちのテーマ」[mp4形式/34MB/2分2秒] 画像は当日の写真を生成AIに再描画させたもの 続いて、「SUNO AI」という音楽生成AIの実演。参加者に一人一節ずつ考えていただいて共作した歌詞を、SUNO AIを使って楽曲化しました。ものの10秒ほどで楽曲ができることは、大きな驚きを持って迎えられて、一安心。同じ曲のアレンジ違いや、参加者からの提案で作った「ぷちたぷち」のテーマソングも含めて、楽しく共作することができました。
実はこの「共作」というのは、以前からやってみたいことのひとつでした。これまでの体験講座では、ひとりひとりが自分の作品を作ることに始終していましたが、参加者同士で一つの作品を一緒に作るということは非常に意義のあることだと思っています。
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参加者に解説を行う月ヶ瀬代表 一方、後半はAIの「注意して付き合わないといけない」点について時間を割きました。ベルナール・スティグレールの「身体の延長としての道具」論や「記憶・感覚の外部化」論を軽く紹介しながら、前述の「身体性と責任」論へ。精神的な意味も含めて、生成AIに依存しすぎないよう心がけ、あくまで主体性を手放さないことが重要であることをお伝えしました。
また、(時間に限りがありましたので駆け足にはなりましたが)著作権に関する問題などにも触れ、全体では生成AIの両面を知っていただけたと思います。
講座全体を通じては、新しい技術が「ワクワクするもの」として参加者に受け入れられる姿それ自体に、わたしは強い希望を感じました。将来を暗く捉えがちな時代が長く続いてきましたが、一昔前では当たり前だった「ワクワクな未来感」を参加者の瞳の中に見られたことは、個人的には万博の年の締めくくりを象徴するようなでき事だったと思います。
関連イベント
姫路市ひきこもり支援推進事業「ぷちたぷち」主催の事例検討会・講演「第6回相談マルシェ」が、2025年12月24日(水)より姫路市総合福祉会館にて開催され、同事業の活動の様子などが詳しく紹介される予定である。

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