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ひめじ芸術文化創造会議

公開日時 : 2018年11月17日

2018年10月17日[水] 20:00より姫路城下町ギルドにて開催されました。前半は、前兵庫県議会議員・北野実氏をゲストに迎え「兵庫県から見た姫路・播磨地域の未来」という観点からディスカッションを行いました。後半は、進行中のいくつかの企画についての進捗報告がありました。

北野実(きたのみのる)氏に聞く、姫路の未来

前 兵庫県議会議員 北野実氏をゲストに招き、姫路・播磨地域の未来についてディスカッションを行いました。特に、「兵庫県から見た姫路・播磨地域」という視点で、播磨臨海地域道路や姫路市文化コンベンションセンター、兵庫県立はりま姫路総合医療センターについて、未来の姫路市にどう資するのか、またそれを最大化するにはどうすればよいのか…という話し合いがありました。



播磨臨海地域道路について


播磨臨海地域道路パンフレット(H30/7/27 兵庫県)より
播磨臨海地域道路パンフレット(H30/7/27 兵庫県)より

この道路のことを教えてください。

インフラというものは、現在の街のキャパシティだけではなく、将来のことを見越して作っておかなくてはならないものです。

姫路市を含めた播磨地域の(特に臨海地域の工業を始めとした)産業発展のために、今のうちから準備しておかねばならない道路網の基幹をなすのが、この播磨臨海地域道路です。かつては「姫路バイパス」が臨海地域の発展を支えましたが、そろそろ次の策が必要。既にあちらこちらの道路で渋滞が発生しています。播但連絡道路の南延とも接続し、播磨の道路「網」として機能することが期待されています。(災害時の補給・連絡路としても重要です)

まさに播磨の一世一代の大計画ですが、費用や工期もそれなりにかかりそうですね。

播磨臨海地域道路は、その大部分を臨海工業地域のバッファゾーンとして設けられている緑地公園の上に高架道路として設置することで、立ち退きに必要なコストや地代をかなり低減させる計画です。建設費用は当初の見積もりでは500億円程度でしたが、実際にはもう少し安く作れる見通しになりました。

また播磨臨海地域道路の西半分は地元自治体が、そして東半分は国がそれぞれ担当していますが、西半分のほうが早く完成するかもしれません。国は、他の地域のこともやらなければなりませんから、どうしても遅くなりがちですね。

なるほど。播磨の工業製品がスムーズに運ばれることで、関西有数の工業地帯として、さらなる発展が期待できそうですね。

播磨の臨海工業地域では世界に通用するものを多く作っていますから、それらがますます発展できる環境が大切ですね。

先日の学会発表でも、「文化・産業の発展には道路網が必要である」と訴えたところでしたから、よく理解できる話でした。



連携中枢都市圏構想と姫路市文化コンベンションセンター

「ホール乱立時代の反省が見えない」という批判がありますが…

長らく、全国各地で自治体ごとにホールを持つような風潮がありました。隣の街が立てたら、「じゃあうちも…」という感じで。結果、あちらこちらの似たようなホテルが乱立してしまっている…という現状があります。平成の大合併が進むと、自治体内で同じようなホールを抱えて難儀する…というようなことも確かにあります。

「インフラは将来の発展を見越して…」というお話がありましたが、大型コンベンション機能を姫路市が持つことで臨海地域道路の整備とも連動できそうですね。

そのとおりです。

政令指定都市を目指したり、今は(合併代わりに)連携中枢都市圏というのをやろうという姫路市に、大きな施設が立つと、周辺の都市から「姫路に全部持っていかれるのではないか」という危機感が現れるのは想像できます。

私たちの会議では(半ば冗談交じりですが)いっそ「播磨市」として合併するか、あるいは「播磨県」として独立するか…というような話もありますが…

(合併・独立はともかく)播磨がある程度の連携・連帯することは大切だと思います。播磨という枠の線引も難しいですが…

神戸市西区や明石なども、なんとなく神戸・摂津文化圏になりつつ…

県の視点で言えば、播磨の県民局・県民センターを東播磨・中播磨・西播磨と3つ設置することで播磨を三割(注・現在は東播磨県民局から北播磨県民局が分離し、播磨が四割されたことに)してしまったのが良くなかったかもしれません。

道州制の議論が起こったときにも、播磨圏域の団結についての話題があがりましたが、あまり関心を持たれなかったですね。

新施設の名称を「姫路市〜」ではなく「はりま〜」とできないか、という話も上がりました。

姫路の人は「姫路」と名をつけたがる傾向があります。かつて播磨空港建設計画が上がったころ、「『姫路空港』ならもう少し姫路市民は協力的になるのに…」という声をよく聞きました。一方で、「姫路」と名がつくと周辺自治体の住民からの関心は下がってしまう、というジレンマがあります。

いまからでも播磨全体で課題と価値観を共有する必要がありそうですね。

播磨の団結が重要なことは間違いありません。(ホール乱立の反省も含めて)自治体同士も張り合いうのではなく、うまく連携できると良いと思います。



兵庫県立はりま姫路総合医療センターの意義


総合医療センターの重要性を説く北野氏
総合医療センターの重要性を説く北野氏

この計画の始まりについて教えてください。

播磨地域の医療環境は、全国でもかなり低い水準にあります。医者もベッドも不足しています。

また地域の大病院のひとつである製鉄記念広畑病院も、母体である新日鉄への負担が過剰で、現状維持も苦しい状態です。

県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院を再編し、高度医療に対応できる大病院を姫路の駅前に設置することで中・西播磨の医療環境を改善できるという考えです。

市の土地を無料で貸与することへの反発がありますが…

それ以上のメリットが市民にあると考えています。特に、中心駅からアクセスの良いところに病院を設置することは非常に重要です。

患者が通いやすいということでしょうか。

もちろんそれもありますが、医者が務めやすいことも大切です。

現在、研修医を含む若い医者が姫路の病院に務めたがらない、という問題があります。まず、県立姫路循環器病センターも製鉄記念広畑病院も市街地から離れすぎているということ。そして、規模がそこまで大きくないということ。規模が大きければ大きいほど、珍しい症例や重篤な患者への治療・最先端医療を経験することが可能になります。

最先端医療というと、具体的には…

現在の計画では精神病棟が16床ありますが、これはなかなかの数字です。

また、明石の兵庫県立がんセンター(ここもベッド不足が目立ち始めています)に匹敵するガン治療の設備が整う見込みです。

優秀な若者を姫路市に留め/引き込むキッカケとなるでしょうか

姫路出身の医者は多いです。ただ、大部分が都会に流出してしまっています。これを繋ぎ止めることができれば、と考えています。どうせなら生まれ育った街/両親の暮らす街で医者をやりたいという若い医者は少なくないと思います。

兵庫県は医師育成と過疎地域の医療に力を入れています。奨学金制度を儲けて、医大・医学部を卒業した若い医者が9年間過疎地に務めることを条件に返済を免除する制度です。ところが、「その返済を肩代わりすることを条件に、都会の大病院が若い医者を引き抜いてしまう」というようなこともあり、なかなか地方に医者が定着しないのです。

劇場施設と医療センターが並んで建つことに批判的な声がありますが…

「劇場の音楽が外に漏れて、静かに入院できないのではないか」という声も聞きましたが、そんなことは絶対にありません。そもそも、横を新幹線や在来線が走っていますから、問題となるならむしろそちらの振動・騒音の方です。(もちろん、それらへの対策は劇場・コンベンション施設も医療センターも万全に行うでしょうが…)

医療センター側から、劇場・コンベンション施設を損ねるようなこともありません。むしろ、土日には医療センター側の駐車場を劇場・コンベンション施設の来場者が利用できる仕組みなども検討しています。

医療センターの外観については景観に配慮するよう、市からも要望を出しているようです。

一方で「大きな病院ができると、風邪を引いても安心(待たされずに早く診てもらえそう)」という街なかに住む人の声も…

実は、これは大きな誤解なのです。先程述べたとおり大病院というのは最先端の医療を行うところですから、例えば町医者では対応できないような患者を中心に引き受けることが中心になります。

ですから、「風邪くらいなら、かかりつけの町医者に行ってください」と…(笑)

病院同士の役割分担、まさに劇場施設の連携もこのようでありたいですね。



姫路の未来

姫路駅周辺の再開発もずいぶん進み、数年以内に文化コンベンション施設と医療センターが完成します。街の形が大きく代わりますね。

駅東の土地は、元々ドームホールを建設する予定でした。16年ほど前に現在の石見市長が大型施設反対・白紙撤回を訴えて当選し、長らく使い道が定まりませんでした。そして、引退直前にさらに大型(3倍近い予算規模)の施設計画を残して去るという…(苦笑)

「施設は必要」と考えている私たちですから、それが作られるというのは歓迎するところではありますが…

コストについてはどうでしょう?

劇場・コンベンションセンターの年間のランニングコストは3億円程度と見積もられています。ただし、地域の文化発展などを考えると必要なコストだとも言えます。単純に「赤字だから」という理由で、直ちにダメだということではありません。

ちなみに、兵庫県立芸術文化センター(西宮市)は年間8億円程度の赤字です。稼働率は高いのですが、楽団(兵庫芸術文化センター管弦楽団)のコストも含めると大体それくらいです。

新医療センターも採算は赤字になるはずです。自治体が抱える病院施設は基本的には赤字で、負担が膨らんでいます。県としては、この機会に播磨地域の医療施設を再編・統合して、コストを減らしつつ機能を拡充するということで期待しています。

新医療センターが若い医師を引きつけるということでしたが、若者が希望を持てる街でありたいですね。劇場施設についても、ホール関係の技術者の高齢化が目立っています。まずは、若い人たちが地元で働いて暮らしていける状態にすることが大切だと思います。

そのとおりです。中央卸売市場やヤマトヤシキの跡地も街全体で活用しながら、魅力的な街にしていかなければなりません。

インタビュー形式で記録していますが、実際には参加者がそれぞれに意見や質問を投げあいました。ディスカッションは1時間程度を予定していましたが、北野実氏には2時間近くお付き合いいただくことになりました。

播磨の独自性、市民がアイデアを出すことの重要性、行政の枠組みの功罪…さまざまな問題について有意義な話し合いとなりました。



企画の進捗・事後報告

古典芸能企画について

180人近い動員で一応の成功となった旨、担当の立花副代表より報告がありました。

いくつかの反省点についても、話し合いが行われました。



音響ワークショップについて

一般参加の人々にも楽しく学んでいただけた有意義な会となった旨、担当の篠原副代表より報告がありました。

なお、この成功を受けて来年1〜2月中に第2回ワークショップを行うことが正式に決定いたしました。舞台機構全般に関する内容で、花の北市民広場大ホールを借りて行います。詳しくは、後日告知いたします。



国際神道シンポジウムの視察旅行について

月ヶ瀬代表を中心に希望者を募り、シンポジウムの聴講に出かけることとなりました。

出席者(敬称略)
北野 実 (前 兵庫県議会議員)
月ヶ瀬 悠次郎 篠原 加奈恵 立花 晃 蘆田 檀 伊勢田 駿佑
文責
月ヶ瀬 悠次郎

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