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ひめじ芸術文化創造会議

公開日時 : 2018年07月20日

世界的ファッション雑誌『VOGUE』とヨーロッパで毎年開催される『Eurovision Song Contest』をヒントに、文化事業の基本指針を提案します。

姫路の公共・民間それぞれの情報発信の現状

観光も含めた広義の文化発信を考える時、その質・量が共に不足しているということには、皆さん同意してくださることでしょう。もちろん、姫路市の発行する『広報ひめじ』や公益財団法人 姫路市文化国際交流財団が発行する『BanCul』、あるいは公益社団法人 姫路観光コンベンションビューロー観光が運営する情報サイト『ひめのみち』など、公共の情報発信はいくつか存在します。また、民間でも地元ブロガーや地域型YouTuberらが情報発信を積極的に行っています。

しかし、公共の情報発信は量がまだまだ不足しています。基本的に公共の情報発信においては、情報の取捨選択はできません。その情報に公益性があるかどうか、だけが基準です。したがって、公共の情報発信は「量を確保すること」が基本指針となるべきです。ところが、これが現状不足しているので、民間はこの補完を行うだけで仕事になっているのです。

民間の発信が行うべきは、公共で行うことができない発信…つまり取捨選択された情報発信であるべきです。例えば、右から得た情報を左の読者に流して「どこそこでこんなことがあるらしい(知らんけど)」というだけの発信、あるいは街のほとんどの店に出向いて全ての店について「ここは美味い!」と言い続ける発信は、情報としては程度が低い。(もちろん、たとえそれが事実であっても「あの店は不味いから行かないほうがいい」と発信することはできないでしょうが)筆者が本当に美味しいと感じた店だけを紹介するくらいの発信の仕方が求められるべきではないでしょうか。

メディアの中立性が疑問視される昨今ではありますが、むしろ民間のメディアは中立に名を借りた無責任な情報発信から脱却すべきです。



民間の文化団体が果たすべき情報発信

ご存知のように、『VOGUE』という雑誌は世界のファッションをリードする雑誌です。その在り方は、姫路のメディアとは全く正反対。彼らは単に「今年は毛皮が流行るらしい」と伝えるだけの媒体ではありません。むしろ、積極的にファッションのトレンドに介入…というよりほとんど操作しています。

姫路でこれと同じような動きを行うことができれば、姫路の街の文化水準は一気に上がるでしょう。姫路には大小様々な文化団体がありますが、明確な指針を持って活動している団体は多くありません。ほとんどの団体は、ただ慣習に従い、時代と共に変化する社会と慣習との齟齬を埋めることができないまま、さまよっている状態です。団体の中に明確な意思決定が存在しないのです。

「意思決定を誰かに委ねたい」という弱い心は、本来クリエイティブな人々にとっては無縁なものであるはずですが、実際多くの人々が抱えている心理です。役者不足は承知しながらも、私たちひめじ芸術文化創造会議が意思決定のコアとなり「今年の流行はこれです」と打ち出すことを将来的には検討する必要があるかも知れません。



テーマを決めた文化祭

例えば『VOGUE』が「今年はなんたらブルーが流行りです」と決定するように、私たちが「今年は『お夏清十郎』をテーマとします」と宣言します。ジャンルも規模もさまざまな文化団体がそのテーマに沿った作品を発表し合うイベントは、新施設の規模・理念に非常に合致します。

この時、参考にしたいイベント例の1つが『Eurovision Song Contest(以下、EVSC)』です。ヨーロッパで毎年開催される『EVSC』は、欧州放送連合(EBU)が主催し加盟放送局がテレビ放送を行う音楽イベントです。これは、各国から1組ずつアーティストを国の代表として出場させ、ヨーロッパ中の視聴者が自国以外のアーティストに投票することでその年の優勝者を決めるものです。優勝国は翌年の主催国となります。それぞれ国の威信をかけて、出場者も視聴者も悲喜交交、大いに盛り上がるイベントです。

本企画も、この『EVSC』の要素を拝借します。始めは出場団体ごとに他薦投票で優勝者を決める仕組みでも良いですし、規模が大きくなれば地域ごとに出場団体を1・2団体ずつ予選で絞って地域対抗で行うこともできます。『EVSC』のようにテレビやインターネットでの配信・視聴者投票を受け付けることもできるかも知れません。更に規模が大きくなれば、播磨全体で市町村ごとの対抗戦もできるでしょう。いずれにしても優勝した団体・地域には、何らかの大きな名誉と少しの実利が与えられるべきだと考えます。

地元愛の醸成、文化水準の向上、内外への地元文化の発信、(文化団体に属していない)一般市民の参加…など、現在の私たちが抱える社会的な幾つかの課題に効果があるのではないでしょうか。

ヘッダー画像の所有権は、Zeljko Joksimovic氏に帰属します。

文責
月ヶ瀬 悠次郎

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