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第6回座談会・記録ノート

公開日時 : 2017年09月15日

2017年09月13日[水] 19:30より、姫路城下町ギルドにて開催されました。「これからの文化産業と観光コンベンション」をテーマとして「地方都市における創造都市・創造農村戦略の在り方」について、龍谷大学研究員の立花 晃(たちばな あきら)氏に解説していただきました。

これまでの都市計画の問題点

「成長モデル」の計画

日本中で「成長」を前提とした都市計画が立てられています。しかし、人口減少も含めた「縮小」がほとんど確実となっています。現代は、むしろ、いかに過疎化する田舎をソフト・ランディングさせていくかという「縮小モデル」を考えるべき時代ではないでしょうか。

また、日本中で立てられている成長モデルの計画を全て実行しようとすると税収の2倍は予算が必要となる、という学説もあります。むやみに計画を乱発するのではなく、効果的な街づくりを行えた都市が生き残っていくでしょう。



進むAI化にともなって消えゆく労働

AI技術の進化にともなって、労働は単純なもの(関数化しやすいもの/非クリエイティブなもの)からどんどん機械化されてゆきます。人類が史上初めて罪悪感を必要としない奴隷を手に入れ、産業革命を超えるほどに労働の在り方が変わる時代が目の前に迫っているのです。

それにも関わらず、都市計画が相変わらず旧い社会の形を前提としていては、やがて現実との間に齟齬が生まれ、多くの予算や熱意や努力が浪費されてしまうことになるでしょう。



教育としての文化政策

従来の文化政策は教育に関する部門が担ってきましたが、それでは都市の経済的活性には結びつくような政策にはなりえません。組織的に下位に位置づけられているため、単年度予算の縛りなども含めて、身動きが取れない状況が続いているのです。



多忙な姫路市行政

姫路市は、2006年の合併により総人口・面積が急激に増え、また最近では連携中枢都市圏構想を掲げ広域連携の中枢市としてのモデルを目指しています。そのため、姫路市の行政は政令指定都市並の仕事を抱えることになり、いくつかの重要な政策が後回しになっている現状があります。



創造都市理論

創造階級(クリエイティブ・クラス)の集積

AIに奪われることがない文化的な仕事ができるクリエイティブな人を「層として」定着させ活用すること、つまり創造都市化が都市の生き残る道です。

姫路には個人としてはクリエイティブな人が居ますが、層としての創造階級はまだまだ薄いのではないでしょうか。



創造産業

創造階級を単に集めるのではなく、彼らの働きを産業化し経済的な活性化にリンクさせる必要があります。そのためには、創造階級にとって働きやすい環境を整備したり、彼らの能力を上手く引き出したりする役割を、他の人々が果たす必要があるのです。

例えば、都市社会学者・経済学者であるイギリスのリチャード・フロリダは、彼の提唱する「創造産業同心円モデル」において、中央に「スーパー・クリエイティブ・コア(創造階級による層)」、そして「クリエイティブ・プロフェッショナル(創造階級を補佐・助長・誘発する層)」、外周に「サービスクラス/ワーキングクラス(環境を整備する層)」を描いています。

創造階級が作り出す「創造経済」と、それらをクラスター化することが、今後の都市計画の重要な指針となるでしょう。



都市戦略としての文化政策

創造都市においては、教育政策としての芸術文化ではなく、都市戦略として明確に打ち出す必要があります。マスタープランとしての文化政策を、具体的に実践していかなければなりません。

そうやって、産業政策と文化政策を一元化することが重要なのです。



6つのモデルケース

6つのモデルケース《内発的発展型創造都市としての金沢市、外発的発展型創造都市としての横浜市、国際戦略型創造都市としての札幌市、市民参加誘発型創造都市としての浜松市、産業振興型創造都市としての名古屋市、イメージ戦略型創造都市としての神戸市》はそれぞれに特徴がありますが、共通していることは「観光」を軸にしていないということ。

観光都市を目指すことで観光都市になったのではなく、いずれも文化産業(創造産業)を育んだことが観光に繋がった。「見世物をやっている」から人が来るのではなく、「見たいと思うものがある」から人が来るのです。



創造都市におけるガバナンス

文化事業を行政が牽引して成功する例は少なく、市民が積極的に行い、行政はそれを支援する側にまわるべきです。

市民は、行政に頼り切るのでもなく、敵対するのでもなく、互いに協力し合って発展させていく手法を身に着けねばなりません。



創造都市の課題

創造階級に利益が偏る可能性が指摘されていますが、ベーシックインカムなどの新しい税・社会保障制度を導入することで、ある程度の不公平感は解消できるのではないでしょうか。

少なくとも、栄達を目指して努力したり、積極的に社会に貢献しようとする人々がそうでない人よりも不幸になってしまう社会を思えば、随分と公平な税・社会保障制度だといえます。



創造農村

我が国では(もともと高水準の文化や産業があった)都市部において創造都市政策を20年近く続け、ある程度の成果が出てきました。現在は、文化や産業が比較的薄い農村において、地場産業の創造性と生活文化に注目した「創造農村」政策にシフトし始めています。

「創造農村」においては、地元の文化・風俗や地場産業を重要視します。地元住民の生活や従来の地場産業を破壊して無理やり観光産業をおこしたのでは本末転倒ですし、住民にとっての何気ない日常生活こそが往々にして外の人々にとっての興味・関心につながるからです。

また、それは同時に、快適な(コンビニライクな)街づくりを行うことを目指すべきではないことを示します。不便益が付加価値やビジネスチャンスになることも多いのです。

私たちは、まず地元地域の抱えている課題を顕在化し、同時に強みになる地場産業を伸展させる必要があります。(SWOT分析)



創造都市政策と創造農村政策のミクスチャ

創造都市政策は、芸術文化政策と創造産業政策を表裏一体とした考え方です。一方、創造農村政策は生活文化政策と地場産業政策の表裏一体。

姫路のような中核都市では、これら2つの政策を上手く取り入れながら独自の政策を打ち出していくのが良いでしょう。



まとめ

都市の創造性を高めるためには「都市戦略としての文化政策」「創造階級の実践」「行政と市民の連携」が必要です。市民ひとりひとりが既存の文化資源をよく理解し、新たな文化を生み出せる人々(創造階級)が活躍できる環境を作っていくことで、今後のさらなる発展につなげていくことができるのではないでしょうか。



その他

コンテンツづくり

モノづくりからコトづくりへのシフトが必要。



ビッグデータの解析

(中国のレンタサイクル事業を例にあげて)企業とユーザーの間でモラルを維持しながら、効率的に社会を活性化させるためには非常に有効。



「アート/芸術」という言葉の定義

リベラル・アーツの訳語として作られた「芸術(藝術)」、またそのカタカナ語としての「アート」の意味を正確に理解して置かなければ、(特に海外由来の文化論・政策論を議論するときには)意味を取り違える可能性がある。実際、「アート/芸術」というのは絵画・音楽・舞踊・彫刻…というようなものだけではなく、テクノロジーのようなものも概念的には含む場合がある。



立花晃氏オススメの書籍

「地域再生の罠〜なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)」
http://amazon.jp/dp/4480065628/

「商店街再生の罠〜売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)」
http://amazon.jp/dp/4480067299/

記録
伊勢田 駿佑
文責
月ヶ瀬 悠次郎
資料
議事録