ダンスパフォーマンス『MAMMOTH』の鑑賞(姫路市立美術館)

公開日時 : 2023年05月14日

ダンスパフォーマンス『MAMMOTH』の鑑賞(姫路市立美術館) - メインビジュアル

文:月ヶ瀬悠次郎 月ヶ瀬悠次郎

2023年5月13〜14日に姫路市立美術館でダンスパフォーマンス『MAMMOTH』が披露され、14日(日)に当会から月ヶ瀬悠次郎代表のほか上田成昭、木村章両幹事が鑑賞に訪れた。また、上田幹事は許可を得てパフォーマンスの撮影を行った。

2023年5月13〜14日に姫路市立美術館でダンスパフォーマンス『MAMMOTH』が披露され、14日(日)に当会から月ヶ瀬悠次郎代表のほか上田成昭、木村章両幹事が鑑賞に訪れた。また、上田幹事は許可を得てパフォーマンスの撮影を行った。

作品を象徴するマンモスの衣装(写真:上田成昭)
作品を象徴するマンモスの衣装(写真:上田成昭)

これは衣装デザイナーひびのこづえ氏、舞踊家藤村ふじむら港平こうへい氏、そして音楽家川瀬かわせ浩介こうすけ氏による総合芸術作品だ。

ひびの氏の独創的で変幻する衣装は、遊び心と前衛さを兼ね備えた素敵な舞台装置あるいは演出そのものとなり観客をきつける。藤村氏の躍動的な肢体は筋肉のひとつひとつが輝きを放ち、物質的な存在であるはずの衣装に生命を吹き込む。そして川瀬浩介氏の音楽が作品のもつ独特な世界観にストーリーの方向性を示すことで、パフォーマンスは完成度の高い芸術作品となった。

舞踊家・藤村港平氏(写真:上田成昭)
舞踊家・藤村港平氏(写真:上田成昭)

客席をかき分けるようにマンモスの姿で現れた「それ」はおよそ40分に渡って留まることなく変幻自在、さまざまな生き物に姿を変え続け、現代を生きる私たちに太古の地球の息吹とともに優しく強く語りかける。観客はその幻想的でユーモラスな動きに魅了され、美術館のエントランスはパフォーマーの身体を通して時空と理屈を超えた心の交わりの空間となった。

あいにくの雨天のために14日の公演は屋内開催となったが、開館40周年記念コレクション展『春の祭典――生きる力を生み出す大地』を体感できる圧巻のステージであった。


雑感/デザインのあり方を学ぶ(月ヶ瀬)

芸術とデザインは対立する概念ではないものの、思考の道筋は異なる。最近は「アート思考」「デザイン思考」という言葉が社会に浸透してきたが、芸術が内なる世界を最高潮に練り上げて表現しようとする働きであるのに対して、デザインは外的な要請に最適化して応えようとする働きだ。

ダンスパフォーマンス『MAMMOTH』が優れた芸術作品であることに疑いはなく、生命の躍動を二人の芸術家とともに創り上げたひびの氏は間違いなく芸術家である。

ワークショップ「ちいさな生きものブローチ作り」の様子。親子連れが多く参加し、思い思いに作品作りを楽しんだ。
ワークショップ「ちいさな生きものブローチ作り」の様子。親子連れが多く参加し、思い思いに作品作りを楽しんだ。

一方、私は13日のワークショップ※1にも参加し、ひびの氏のデザイナーとしての側面に触れた。中でも、ひびの氏が「時間内にきちんと完成させることが大切。多少形が変でもかまわないので、細部にこだわり時間をかけすぎて、結局間に合わなければ意味がない。とにかく、それが何であるかが分かるレベルに仕上げることが一番大切だ」と何度も繰り返しておられたことは印象的だった。(ひびの氏の活躍には到底及びようもないが)舞台の仕事や広告デザインに携わる身として、また「2ベルが鳴ったら幕が上がる。そのときに裸のまま演者を立たせるわけにはいかないし、無音で歌わせるわけにもいかない。下手くそでもなんでも、とにかくその時までに物があることが大前提」という文化で育ってきた私にとっては、大変共感し、とても励まされる思いだった。

※1 ワークショップ「ちいさな生きものブローチ作り」/13日(土)午前10時から姫路市立美術館2階講堂にて開催された、ひびのこづえ氏によるワークショップ。

絵画を鑑賞するときに絵に近づいたり遠ざかったりするように、企画や作品を作るときには小さな部分に注意を払う一方で、全体的な動き(リソースやスケジュール感)を把握しておかなければならない。そうでなければ、必要なときに必要なものが準備できていなかったり、上流で仕上がった制作物を引き継ぐ下流のスタッフがいなかったり。最悪の場合は作品が大失敗に終わったり、そうでなくても損失を取り戻すのに大変な労力を必要としたりすることになるのだ。

仕上がった作品そのものの素晴らしさに触れたこともさることながら、一流の仕事人が仕事に取り組む姿勢を合わせて垣間見られたことにも感謝したい。

関連リンク

 

■ 開館40周年記念コレクション展「春の祭典――生きる力を生み出す大地」

https://www.city.himeji.lg.jp/art/0000024039.html

 


出席者(敬称略)
月ヶ瀬悠次郎
上田成昭
木村章
記事協力
姫路市立美術館
当会管理外の著作権
衣装・パフォーマンス:ひびのこづえx藤村港平x川瀬浩介

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