役員の活動/「中谷芙二子《白い風景――原初の地球》 霧の彫刻 #47769」新作発表会に参加

公開日時 : 2023年05月04日

役員の活動/「中谷芙二子《白い風景――原初の地球》 霧の彫刻 #47769」新作発表会に参加 - メインビジュアル

文:月ヶ瀬悠次郎 月ヶ瀬悠次郎

2023年5月2日(火)、姫路市立美術館(姫路市)にて庭園アートプロジェクト「中谷芙二子《白い風景――原初の地球》霧の彫刻 #47769」のプレス向け新作発表会が開催され、月ヶ瀬悠次郎代表が参加した。

2023年5月2日(火)、姫路市立美術館(姫路市)にて庭園アートプロジェクト「中谷芙二子《白い風景――原初の地球》霧の彫刻 #47769」のプレス向け新作発表会が開催され、月ヶ瀬悠次郎代表が参加した。

本企画は、姫路市立美術館が2021年より行っている4ヶ年計画「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の一環として開催され、昨年に引き続き“霧の彫刻家”として世界的に知られるアーティスト中谷芙二子(なかや・ふじこ)氏による作品の展示が市立美術館前庭において行われる。


作品名
中谷芙二子《白い風景――原初の地球》霧の彫刻 #47769
会期
2023年5月3日(水・祝)〜11月26日(日)
午前10時〜午後5時(60分または30分に1回、霧が発生します)
入園料
無料
会場
姫路市立美術館 前庭
主催
姫路市立美術館
メディア向け写真撮影に応じる清元秀泰市長と中谷芙二子氏
メディア向け写真撮影に応じる清元秀泰市長と中谷芙二子氏

同館二階講堂にて姫路市長の清元秀泰(きよもと・ひでやす)氏と中谷芙二子氏がパネリストとして、また姫路市立美術館館長である不動美里(ふどう・みさと)氏がモデレータとして登壇し、作品の紹介と作品にまつわるトークセッションが行われた。


姫路市長 清元秀泰氏 / 挨拶(要約)

4ヶ年計画「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」は優れたアーティストに文化と歴史の街・姫路市を良く知っていただいた上で、その文化価値を高め、世界に発信していただくプロジェクトです。世界的に活躍し、文化功労者に選出されたアーティスト中谷先生には、そのうちの3年間参加していただきます。姫路市のことを大変気に入っていただいて、昨年から素晴らしい作品を提供していただいています。本年度の作品《白い風景――原初の地球》霧の彫刻 #47769はとても先駆的な作品。ぜひ、その素晴らしさを発信してください。関係者各位に大変感謝いたします。


トークセッション(要約/敬称略)

中谷芙二子今回の作品では、無垢な真っ白い原初の地球を霧で表現しようとしました。今朝撮っていただいた宣材写真の素晴らしさに助けていただいて、皆さんにイメージが伝わるとよいのですが……

不動美里「波の表情」というようなことをおっしゃっていましたが、それはどういうことでしょうか?

霧の様子(動画 12秒)

中谷「霧の彫刻」では、風の動きを理解しコントロールする必要があるが、なかなか簡単にできることではありません。風を支配するのではなく、波の表情を生み出してくれる存在として受け止めるようにしています。風が生み出す模様は、すなわち地球が生み出す表現ですから。実は思い描いたとおりの作品になっておらず、それを少し残念に思っている節もありますが、それも自然との共作だからこそ。

現代社会は「こうしなければならない」という管理的な制約に満ちていますが、自然の風が生み出す自由な霧の中で子どもたちが自由に遊ぶことができる……子どもたちには、そういう自由な楽しみに触れてもらいたいと思っています。

霧を発生させる装置
霧を発生させる装置

不動霧の出方を試すために、噴霧器のノズルの高さや向きなどを随分と試行錯誤しましたが、その実験中も通りすがりの子どもたちが霧に戯れて楽しんでいたのが印象的でしたね。

中谷ノズル噴射のタイミングを塊ごとにうまくずらすことで、波のようなうねりを生み出します。対流によって地球の丸さを表現した丸い形を出現させるよう工夫しています。

不動アーティスト・ステートメントには「四方から発生する霧は、互いに出会って合流し、風に吹かれて上昇する。/霧は逆転層にぶつかると下降しはじめ、対流が始まる」とありますが、「逆転層」とはどのようなものなのでしょうか?

中谷霧の塊が他の霧の塊とぶつかったときに、様々な表情(干渉や相殺、渦……)が生まれます。衝突で持ち上げられた冷たい霧の塊が上空の暖かい空気に触れると、今度は下降しようとします。そうすると、入れ替わりの動きの中に渦が生まれます。そういう性質を利用した手法です。

全体的な、蓋然的な流ればかりに目が向きますが、その実際は小さな水の一粒一粒に動きがあり、事象が起きています。私たちの社会が抱えている温暖化、気象変動にしても、そういう小さな事象の結果として起こっていることだと思いを巡らせています。

清元秀泰姫路城を借景として活用した昨年度の作品に引き続き、地球の原資を想起させる壮大な作品。私たちはつい、目に見える色のあるものばかりを追いかけてしまいます。空気や風には色はなく、もともと肌でしか感じられないもの。それを視覚化させる作品。

また、作品の中で子どもたちが走れば、それによって新しい風が生まれ、新しい景色が生まれます。作品テーマに「風景を聴く」とあるように、目に見えるものにとらわれすぎず、流転する景色を五感で感じていただきたいです。ぜひ、多くの市民、世界中の中谷ファンに見に来て欲しいと思います。

地元メディアの取材を受ける中谷芙二子氏
地元メディアの取材を受ける中谷芙二子氏

中谷(雪の結晶および人工雪に関する研究で有名な物理学者である父・中谷宇吉郎氏の影響を記者から尋ねられて)研究対象である自然に対して、誠実に向き合うこと。相手(自然)が語り始めるまで純粋な気持ちで待つ。そういう態度を学びました。

清元環境や気象に目を向けられたお父様のDNAはきっと今回の作品にも受け継がれていることでしょうね。幼少期に本で学んで感動したことですが、温度や条件によって雪の結晶は形を変化させます。霧中の水滴同士が結合して重さを増すと空中に浮くことが難しくなって落ちてくるように、あらゆるものが流転する様子を「原初の地球」の中に思い描いてほしい。

イメージ通りの仕上がりではなかったと言われるが、移ろう日々の中で姿かたちを変える作品を、どなたにも楽しんでほしいと思います。


「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」

 

■ 令和5年度 庭園アートプロジェクト「中谷芙二子 霧の彫刻 ――風景を聴く――」開催のお知らせ(姫路市役所公式ページ)

https://www.city.himeji.lg.jp/shisei/0000024132.html

 

■ オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト(姫路市立美術館公式ページ)

https://www.city.himeji.lg.jp/art/0000023985.html

 


記事協力
姫路市立美術館
当会管理外の著作権
中谷芙二子《白い風景――原初の地球》霧の彫刻 #47769、
姫路市立美術館前庭、2023年5月2日
©Fujiko Nakaya ©Himeji City Museum of Art

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