コラム「匠工芸代表・折井匠さんと話して感じたこと」
公開日時 : 2023年03月03日

文:加納悠以
2022年10月8日から11月6日にかけて、加古川総合文化センター美術展示室にて開催された展覧会「ファンタジーを体感せよ! ファンタジー武器屋タクミアーマリーの世界」への取材旅行について、加納悠以幹事よりコラムが届いた。
2022年10月8日から11月6日にかけて、加古川総合文化センター美術展示室にて開催された展覧会「ファンタジーを体感せよ! ファンタジー武器屋タクミアーマリーの世界」への取材旅行について、加納悠以幹事よりコラムが届いた。
匠工芸代表・折井匠さんと話して感じたこと
私は歌手としての仕事以外にも、デザインや映像編集など幅広く活動しており、最近はコラムニストとしてもいくつかの媒体で執筆している。
昨年11月3日、加古川総合文化センター美術展示室で開催されていた「ファンタジーを体感せよ! ファンタジー武器屋タクミアーマリーの世界」を月ヶ瀬悠次郎代表、高巣恵幹事と共に訪れた。
主催は、高砂市のプラスチック加工などを行う株式会社匠工芸。
プラスチックで作られた剣とは一体どういったものなのだろうか…… とても興味をそそる内容で、はじめはプライベートのつもりで訪れたのだが、緻密に作り込まれた世界観やモノづくりへの真摯さにコラムニスト魂が刺激され、思わずアポ無しで取材をオファーしてしまった。匠工芸の折井匠代表(以下、折井さん)は快諾してくださり、細かな取材は後日オンラインにて執り行うこととなった。
常日頃から取材時には事前にある程度の筋書きを想定した質問を準備することにしており、この取材も事前に質問を用意して臨んだのであるが、折井さんの話は匠…もとい、巧みで、やり取りは予想以上の盛り上がりをみせ、1月7日公開の記事(よろず〜ニュース(記者名:ぽすわんのカノ〜))にはとても書ききれないほどの素晴らしい話を伺うことができた。
以下は、割愛したインタビュー内容を個人的感想を交えながら編集したものである。
今もガンと戦う日々
折井さんの第一印象は、元気で面白いお兄さんだ。非常にハツラツと若々しい印象だった。事前情報として、20代前半から今に至るまでガンだということは知っていたがとてもそうは見えなかった。
高校卒業後、プラスチック加工会社へ入社して2年後に発覚してから今に至るまでずっと闘病を続けているという。
NCルーターに感じた、ガンダム
小さい頃から、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストといったゲームや、ガンダムが好きだったという折井さん。

何度も繰り返す再発と入退院の中で精神を摩耗していたが、20代後半で巡り合ったNCルーター(プラスチックを自在に加工する機械)にまるでガンダムを操縦するような開放感を見出したという。
「操縦して、いろんなものを好きに加工したい。これが欲しい!」
ようやく見つけた希望。購入費用1000万円に対して貯金は50万円だったが、周りの反対を押し切って起業し、自社の設備として機械を購入した。
折井さんの強さは“ワクワク”にある
様々な転機があったが、折井さんが前向きであるという点は一貫している。

それは1000万円の機械を買った時も、さまざまなプロダクトを世に送り出した時も、各地で出展をする時もだ。
私は、その前向きさの芯に“ワクワク”があると思っている。
NCルーターは、ガンダムと重ね合わせた時に“ワクワク”したし、様々なプロダクトができる時も、大事にしたのは“ワクワク”だった。剣づくりに没頭して当時の社員がやめたりもしたが会社が救うきっかけになったのもまた“ワクワク”だった。(この辺りは、前述記事を見て欲しい)
私は、この“ワクワク”がとても大事だと思っている。
挫折した時に“ワクワク”が芯だと立ち直れるが、「自分は“ワクワク”していないが、お金や人やお金のために頑張る人」は転けた時に立ち直ることが難しい。(と私は思う)
やはり、自分の内から湧き上がる感情を軸に前に進む、これこそが純度の高い前向きさを生み、山谷を超えてもなお前進できる方法だと感じる。
これが、折井さんの強さの正体で、私たちが生きていく上でヒントにできることのように思う。
まとめ:文化は文化を生み、継承されていく
折井さんのポジティブさは言わずもがなだが、底なしの前向きさを引き出したのは文化の持つパワーだと思っている。ガンダムや、ファイナルファンタジーでワクワクした原体験を追いかけることで折井さんの今があるのだろう。

どこかで笑顔は免疫をあげると聞いたことがある。ガンダムなどの作品からもらった笑顔が、折井さんの剣づくりへ繋がり、その後の様々なプロダクトの礎となった。
文化が文化を生んだといえるのではないだろうか?
そして、折井さんの剣は既に手にした色々な人を笑顔にしている。既に剣を手にした誰かの人の病を斬っているかもしれない。また、そこからインスピレーションを得た人が新たな作品や文化を生み出していたら、それもまた文化の継承といえるだろう。
文化、芸術がそういう風に繋がっていくことは私にとって非常に嬉しいし、社会全体にとってもいいことだと信じている。
株式会社匠工芸 https://takumikougei6.co.jp/