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ひめじ芸術文化創造会議

公開日時 : 2018年10月31日

本稿は、2018年8月27日[月] 大阪市中央区にて開催された視察旅行についてまとめたものです。フードミュージカル『Gotta』について、主催の株式会社バイタルアートボックス・今井隆彦、および出演者の妃那マリカの両氏にインタビューを行いました。両氏(特にプロデューサーの今井氏)には、不躾な質問にも快く回答いただき、感謝いたします。なお、本稿の記録は「ふるさとづくり青年隊」隊員でもある橋本英司が行い、当会議にて編集を行いました。

プロデューサー・今井隆彦氏に聞く(要約)

開催の経緯

企画のはじまり

ノンバーバルフードミュージカル『Gotta』
ノンバーバルフードミュージカル『Gotta』

「Gotta」というと、界隈ではあまり前例のない企画だと思いますが、そもそものスタートは…?

Gottaを上演する劇場は、道頓堀のくいだおれビル地下一階フロアにあります。この場所には、元々ファミレスがありましたが、2年前に空きテナントとなりました。「街の真ん中に空きテナントができることは望ましくないので、どうにかできないか」という話が上がってきたので、「じゃあ、なにかやりましょう」と。



伝統と歴史

その「なにか」が、舞台というのは自然な流れでしたか?

道頓堀という場所には、古くから芝居小屋がありました。歌舞伎もあれば、松竹新喜劇もあり…。舞台・芝居の文化が下地としてあったのです。食い倒れ文化なども、元は芝居をみながらご飯を食べるというようなことが始まりでした。



リスクと覚悟

反対の声…というより心配の声が多かったのでは?

そのような流れで「空きテナントを芝居小屋にしようか」となりましたが、社長(バイタルアートボックス)からも「リスクが大きいのでは?」との懸念の声。

そんなところに、ある旅行会社が協力を申し出てくれたのです。

こうして、ファミレスだった場所を劇場に作り変え、なんとか開業することができました。



ノンバーバル、芝居、食文化…

企画の狙い、あるいは他の類似エンタメとの違いは?

当初はインバウンド需要の高まりを見越して、外国人観光客をターゲットとした企画でした。これによって、「ノンバーバル(言葉を使わない)エンターテインメント」としてスタートしました。

また、テーマは地元・道頓堀に所縁のあるものにしよう、と。それで、食べ物や音楽・芝居を軸に演出の方向性が決まりました。観光客らが地元の伝統文化に短時間で触れることができ、その中で気になったものがあれば、それぞれ他の劇場へ足を運んでもらう…という仕組みを狙っています。



ネーミングについて

Gottaロゴマーク
Gottaロゴマーク

Gotta(ゴッタ)というネーミング、非常にわかりやすく覚えやすいものですね。

Gottaは「ごった煮」をもじったもので、道頓堀の食べ物(たこ焼き、クレープ、串カツ、ラーメン、フグ…)や芝居(歌舞伎、レヴュー、三味線など)をごった煮にした演目となっています。

すんなり決まりましたか?他の候補と迷ったとか?

「短いものが良いだろうか」とか「濁音や吃音が入るものが良さそうだ」とか、いくつか候補があったなかで、社長が決定しました。特に異論なく、関係者一同「これ(Gotta)、いいよね」と。



アイデンティティ

Gottaが表現する地元の文化…というとき、「地元」というのはどれくらいのエリアを指しているのでしょう?

Gottaは大阪ミナミの道頓堀という地域に根づいています。さすがに、「大阪」「関西」となると広すぎてぼやけてしまうでしょうね。



地元の人達の反応

地元・道頓堀の人々の反応はどのような感じでしょうか?

オープン前に内覧会をやって、地元の人達に見てもらいました。また、地元・道頓堀の盆踊りや夏祭りなどのイベントなどにも積極的に参加するようにしています。

なかなか全員とは行かないでしょうが、少しずつ応援してくださる地元の方が増えていくと良いと思います。



現在(2018年8月末)の運営

6月1日のオープンから2ヶ月が経ちましたが、軌道に乗ってきたところでしょうか?

会場となる劇場のキャパは100席。毎日3回公演を、キャストをシフトさせながら複数人で演じています。

少ないお客様で上演することもあります。



制作サイドの課題について

コストと収益

お答えづらいかもしれませんが、収支はどんな感じでしょう?

現状(2018年8月末)では、まだまだ赤字が続いていて、大変厳しい状況です。

1日100人(各回33人)の来場で収支がトントン…といったところです。



助成金と広告協賛

チケット販売以外の収入については?

公的な助成金や商店街などからの援助を受けて運営しています。上演に際しては企業のCMが流れています。



オフィシャルパートナー、特別協力、後援…

フライヤーなどには「オフィシャルパートナー」という記載がありますが…

オフィシャルパートナー各社には協賛金をいただいています。

「特別協力」「後援」は?

チラシを置いてもらったり宣伝協力していただいています。



チケット販売の方法

チケット販売の経路で一番大きいのは?

インターネット(イープラス)や当日受付でも販売していますが、やはり出演者のファンの方が多いのが現状です。チケットを良く売ってくれる出演者はとてもありがたい。

先程お話のあった「旅行会社の集客」については?

宣伝など頑張っていただいていますが、(特に旅行関係は)すぐに効果が出るものではありませんから、これからボチボチ…という感じです。Gottaを組み込んだ旅行パッケージを10月以降、旅行会社が設ける予定です。

団体客として修学旅行・学校旅行の申込みは?

企業の団体旅行などの観劇はお申し込みいただいていますが、学校はまだ先ですね。



SNSでの発信

ショー内に写真撮影OKタイム有り
ショー内に写真撮影OKタイム有り

SNSやその他の告知ツールの活用などは?

SNSによる情報発信も行っていますが、公式にはインスタグラムを毎日更新するにとどまっています。

来場者にも(写真撮影タイムを儲けるなどして)SNSでの発信を呼びかけています。

隣接のカフェブースでのワンドリンクサービスなどの特典をつけて発信力を強化することを考えています。



出演者について

現状、チケット販売は出演者のファンの方が多いとのことですが、様々なジャンルの出演者というと逆に温度差もあるのでは?

確かに、OSK出身者や元歌舞伎俳優など大きな舞台を経験した芸に秀でた出演者が多い一方で、出演者間で芸の質に差もあります。

「いつもと違う」種類のステージに出演することについて、お客さんの反応はどうですか?

特にクレームや否定的な声は聞いていません。むしろ、それぞれのファンの方が見に来てくれるのがありがたいです。



ナイトカルチャー助成金

確か、大阪府はナイトカルチャーに力を入れており助成金を出しているとのことですが…

その助成金を得てGottaも12月から夜公演を行う計画です。

詳しくは「フードミュージカル『Gotta』視察旅行 #02」にて



カード決済への対応、呼び込みの難しさ

その他、外国人観光客を集客する上で難しいところなどは?

アリペイなど、電子マネーへの対応を急がなければならないと考えています。現状ではチケットは券売機販売ですから、現金でしか購入いただけません。中国人観光客は、特にカード決済が多いです。

(これは外国人に限らずですが…)通りすがりの観光客に「Gotta」が何であるかを端的に伝えるのが難しい…というのも、大きな課題です。出演者が衣装を着て呼び込みなどを行っていますが、「ノンバーバル・フードミュージカル」と言っても「なにそれ、ご飯食べられるの?」と(笑)「フード・ミュージカル」「ライブ・エンターテイメント」「Japanese Traditional Entertainment」など、いろんな表現をしてみてはいますが、なかなかうまく伝わらないですね。



演出について

日々進化するGotta

上演開始からおよそ2ヶ月、何か変更などはありましたか?

スタートしたときから常に、演出の北林先生(演出家・北林佐和子)を中心に作品を磨き続けています。観客の反応をみてセリフを減らしたり、プロジェクションマッピングの映像も作り変えています。

常に、ライブ感が出るように工夫しています。



プロジェクションマッピングについて

アニメーションとステージの融合<br />(写真提供:道頓堀ZAZA)
アニメーションとステージの融合
(写真提供:道頓堀ZAZA)

プロジェクションマッピングといえば、会場壁面を使ったアニメーションとステージの融合はGottaの目玉の一つですね。さぞ最先端の機材を使用しているのだろうと思っていたのですが、実際に舞台を拝見すると複数台の(一般的な)プロジェクターを組み合わせて使用していたようですが…

はい。プロジェクターを11台組み合わせて使うことで、複雑なマッピングを行っています。複数のメーカー・形式のプロジェクターを使って齟齬がないようにするのは大変ですが、プログラマーがうまく調整してくれています。

アニメーションには力を入れていますが、同時にコストがかかるところでもあります(苦笑)

創意工夫によって実現しているとのことですが、実際に会場でプロジェクターを見ると「よく、これだけのものを組み合わせられるな…」と感心しました。

本記事に掲載されている画像などは、株式会社バイタルアートボックスの許可を得て撮影または転載したものです。

この取材旅行は、兵庫県青少年本部の「ふるさとづくり青年隊」事業の一環として行われました

出席者(敬称略)
今井 隆彦 (株式会社バイタルアートボックス)
妃那 マリカ (出演/ミス・クレープ役)

月ヶ瀬 悠次郎 立花 晃 高巣 恵 伊勢田 駿佑 橋本 英司
志穂(Beauty Artisan/ヘアメイクアップアーティスト)
文責
月ヶ瀬 悠次郎

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