アクリエひめじオープニングシリーズ 野村萬斎×杉本博司「神秘域」公演の観賞

公開日時 : 2021年09月02日

アクリエひめじオープニングシリーズ 野村萬斎×杉本博司「神秘域」公演の観賞 - メインビジュアル

文:月ヶ瀬悠次郎 月ヶ瀬悠次郎

2021年9月1日(水)、アクリエひめじオープニングシリーズ 野村萬斎×杉本博司「神秘域」公演が行われ、当会からは月ヶ瀬悠次郎代表と高巣恵幹事が観劇に訪れた。

2021年9月1日(水)、アクリエひめじオープニングシリーズ 野村萬斎×杉本博司「神秘域かみひそみいき」公演が行われ、当会からは月ヶ瀬悠次郎代表と高巣恵幹事が観劇に訪れた。

以下は、月ヶ瀬代表による報告である。


月ヶ瀬悠次郎代表よりの報告

当会にとって長らく最大の関心事であったアクリエひめじのこけら落とし公演を、当代きっての人気狂言師・野村萬斎が舞うという。それも「神秘域」と題された公演とあっては、見遁すべきではない。

感染症対策のために劇場改札では間隔を開けて並ぶ来場者たち
感染症対策のために劇場改札では間隔を開けて並ぶ来場者たち

こけら落としを記念した市長挨拶の後に披露された演目は能楽囃子、狂言「蝸牛」、そして儀式舞「三番叟」。正統派芸能でありながら、初心者にも分かりやすい。

特に「三番叟」はこけら落とし公演に相応しい神聖な舞であった。「舞うというよりは、踏みしめる」とは市長挨拶で紹介された野村萬斎氏の言葉である。現代美術作家の杉本博司氏の幻想的な世界観の中、アクリエひめじに芸術の種が蒔かれ、芸神の御霊が宿ったように感じた。携帯電話のエチケットが守れていない入場者が数人いたことは残念であるが、流行りのアイドルのコンサートなどで新ホールの門出が行われなかったことは幸いである。新施設の幕開けに相応しい公演であったと喜ばしく思うところだ。

約1000人の来場者
約1000人の来場者

観客約1000人。前方席を潰した1階席にその大半が集中しており、少し“密”の気配もあったが、賑やかに幕開けを行いたいという関係者や市民の思いがあってのことと受け止めたい。また、来場者に和服姿の女性が多かったことも印象深い。コロナ禍以来、数少ない「晴れ着を来て出かける機会」となったようだ。

他方、いくつかの小さな混乱もあった。コロナ対策として、入場者はチケットの裏に名前と住所を記載することが求められたが、改札で回収される側に書くべきところを入場者に返還される側に渡って書いてしまった人がいたようだ。書き直しの誘導に人員が奪われ、入場がもたついた結果、開演が約5分押した。

また、駐車場の混雑もみられた。これは筆者の予想だが、公共交通機関の利用を促進するために、クレームを覚悟の上で混雑を来場者に体験させた可能性がある。駐車場の狭さや改札の問題については建設計画中から多くの指摘がありながらも、立地や周辺の交通許容量の壁があり、現在の状態に結着したことは周知のとおりである。また、公共交通機関を使った来館が繰り返し推奨されてきたことであるので、ここでは「混雑があったこと」について不満を述べることはしない。

ただ、以下の点については改善を検討して貰いたいと思う。事前精算後に混雑で出庫が遅れた場合に、改札で追加徴収されることがある。運転手の多くは渋滞緩和のために設置された事前の精算機で支払いを済ませたつもりになっており、その混乱によって渋滞が助長された可能性がある。また、車止めや立て札がなく白線と植え込みによって区画が分けられているが、白線は地面の起伏で見え辛いところがあり、通路と駐車スペースの違いがわかりにくくなっている。出口への誘導も弱く、区画を無理に横断した割り込みや、順路がわからず迷走する車も見られた。北側に臨時出口が設けられているのかも知れない……と思ったのか、そちらに向かう車もあった。緊急時や特別な状況で大型車両などを通すために立体的な構造物をなるだけ設置しないという意図があるのだろうが、何らかの手立てを考えたほうが良さそうである。

姫路市立美術館にて「日本の心象、刀剣、風韻、そして海景」を7月3日(土曜日)から9月5日(日曜日)まで開催中。展覧会では、本公演の舞台構成を行った写真家・現代美術作家の杉本博司氏の作品も展示しているとのこと。


出席者(敬称略)
月ヶ瀬悠次郎
高巣恵
記事協力
瑞雲山常福寺

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