役員の活動/令和2年度活動報告/月ヶ瀬悠次郎代表

公開日時 : 2021年07月05日

文:月ヶ瀬悠次郎 月ヶ瀬悠次郎

月ヶ瀬悠次郎代表より、令和2年度の活動報告がありましたので掲載します。

多分に漏れずコロナ禍の影響を受けて、万事が予定通りに進まない一年でした。これがまだ暫く続くというのは喜ばしくはありませんが、前向きに取り組みたいと思います。さて、この一年の活動は主に「舞台芸術の支援(印刷物デザインや音源制作)」と「書籍の装幀」を二本柱として行いました。


舞台芸術の支援

歌劇(宝塚・OSKなど)出身者やその他の演劇人・音楽家らの主催する公演にて、フライヤー・パンフレット・チケットなどの印刷物のデザインを担当しました。また、いくつかの公演では制作や音源作成も業務として受けました。

舞台イベントのフライヤー
舞台イベントのフライヤー

それらの中には、緊急事態宣言の発出などの事情で中止/延期になったものもありますが、いずれも「コロナ禍の中でもできること」や「コロナ禍の中だからやるべきこと」を模索した作品たちでした。十分な距離(ソーシャルディスタンス)を保って観客数を減らす、動画配信を並行して行う…といったすっかりおなじみになった対策も、比較的早く取り掛かった人たちが多かったように思います。(ある程度の規模になると、企画から実施までは時間がかかりますからね…)

どの業界においても言えることですが、舞台人の中にも新しいことに取り組む意欲のある人と既存の体制の中で安楽に過ごすことを望む人がいます。私の周りには、比較的前者の匂いをさせる人が多いことはありがたいことだ、と改めて思いました。


書籍の装幀

コロナ禍下においては仕事のみならず、休暇の過ごし方も在宅が求められるようになりました。書籍の装幀を始めたのは、コロナ禍が始まるより一年以上前ですが、よい時期に取りかかれたように思います。

書籍表紙
書籍表紙

それは、単に「書籍の需要が拡大したので、仕事にあぶれずに済んだ」ということではありません。「社会が大きく動くときに、豊富な知識と経験を有している著者の方々と直接やり取りをする」ことができた、ということです。多くの場合は、装幀と同時に編集も兼務していますので、草稿段階から(最終的には省かれてしまう部分を含めて)著者の思いや考えの足跡を間近に見ることができます。これは、なかなか得難い経験を私にもたらすものです。

また、書籍は学問の基本的な要素の一つです。日本が世界に誇れるものの一つに歴史の長さがありますが、それは書物・記録がきちんと残っているということとほとんど同義です。パソコンの遅れている国は不便な国ですが、本のない国は「存在しないのと同じ」です。デジタル化の並の中で日本の高い製本技術が失われていくことがないよう、その一助となれればと思います。


ありがとうプロジェクト

その他、個人的に開始した企画の一つが「ありがとうプロジェクト」です。

ありがとうプロジェクト/ポスター
ありがとうプロジェクト/ポスター

これは、コロナ禍の中で市民の生活を維持する方々に感謝の意を示そうという趣旨のものです。同様の企画は「エッセンシャルワーカー」という表現を用いて行われることが多いのですが、「ありがとうプロジェクト」は特に公務員を対象として(名指しして)いる点が特徴的です。

「公務員に感謝することは悪いこと」、あるいは「公務員に感謝していることを知られると変な人だと思われる」という意識が蔓延しているせいか、なかなか活動が広まりませんが、粘り強く折に触れて宣伝していきたいと思います。

なお、ポスターの告知・配布に際しては伊勢田委員が協力してくれました。この企画は「文化芸術に関わらない」という点を除けば、現在の芸文会議の方針に近いように思います。


スーパーサンガ(宗派を越えてチベットの平和を祈り行動する僧侶・在家の会)

世界的にチベット問題が話題になりつつあった2008年に北京五輪が開催され、世界をめぐる聖火リレーは行く先々で「フリーチベット」を掲げる人々の中国への抗議デモに遭遇していました。日本の会場となった長野市には抗議デモを押さえつけるための中国人が沿道を埋め着くほど動員され、多くの日本人に「数の暴力」への恐怖を思い知らせるという事件がありました。

その後、「仏教徒であるチベットへの配慮」を理由に長野の聖火リレー出発地の役割を返上した善光寺の僧侶や書寫山圓教寺の大樹玄承師を始めとしたチベットへの共感をもった僧侶たちによって「宗派を越えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会(スーパーサンガ)」が始まりました。私は2015年より参加していますが、2020年度より幹事として会報誌やWEBサイトの編集管理、事務局補佐を担当しています。

スーパーサンガは特定の宗教・宗派の布教を行う団体ではありませんが、「宗教」への偏見に晒される危険性を伴っています。しかし、信仰の自由は憲法に保証された重要な権利の一つですし、文化芸術と宗教的なものは不可分なものであると感じています。

全国規模で展開される団体の役員として吸収できる組織運営術の他、人脈や協働の機会などを芸文会議に持ち帰ることができると思います。


当会管理外の著作権
フライヤー等のデザインについては、各イベントの主催団体、出版社または月ヶ瀬悠次郎に帰属します

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