役員の活動/令和2年度活動報告/立花晃副代表

公開日時 : 2021年07月04日

文:立花晃 立花晃

立花晃代表より、令和2年度の活動報告(副代表として)がありましたので掲載します。

2020年度は、制作活動、研究活動共に、少なからずコロナ禍の影響を受けましたが、幸いにも双方比較的忙しく、慌ただしい一年を送りました。

一年の前半は、主に個人の制作活動や、グループ展、アトリエルカ・ステインドグラスのデザイン・制作担当としてのステインドグラスのメンテナンス事業などへの取り組みが中心となりました。


ステンドグラス修復など

5月〜8月中は、神戸松蔭女子大学のチャペルに設置の私の母、立花江津子が40年前に制作したステインドグラス作品(写真:概ね500×1000mm〜700×1000mm×55枚=表裏110面)の修復・メンテナンスを行う事が昨年末より決定しており、それに先駆けて4月中にドローンで、5月中に(地上10メートルの位置に設置されているため)竹中工務店設計による足場を組み上げて調査を行いました。その上で痛み具合や湾曲具合を見、設置マケットの制作、見積もり等を行いました。また、国からも施設修復の補助金が出るようなので、それらの一部書類作成、アトリエの作業スペースの確保…など世の中のコロナ禍のステイホーム状態とは逆に、むしろ普段より忙しい状態でもありました。

実施までの間、何度も大学の機関議論によりコロナ事由により中止の危機に立たされましたが、最終的には委員会の機関決定により、実施の認可が下りました。実際野作業は、竹中工務店によりチャペル内部に設置された高さ10メートルにもなる櫓足場から滑車で作品を、神戸百年家具、牧本木工所の職人の手によって一つずつていねいに下ろし、アトリエルカに運び込んで溶接の劣化した部分の修復、ガラスの研磨、洗浄、パテ埋めのし直し、などのいくつもの工程のメンテナンス作業を全ての索引について表裏ともに行い、新たに牧本木工所制作による木枠に収め、無事元の場所に納めることが出来ました。


工芸展出展など

一方2019年に続き、あべのハルカスにて6月末に開催が予定されていた大阪芸術大学工芸学科OB展、第2回『工芸のちから』は残念ながら中止となってしまいました。

しかし、大阪芸術大学金属工芸卒業展『Melting Pot(坩堝)』は、芸大金工学科とも縁が深く、新人の登竜門ともなっている堺市のギャラリー「いろはに」にて開催され、7月24日(金)〜8月2日(日)の期間中、コロナ禍にもかかわらず、多くの人が訪れ、盛況の内に終了しました。

逆に後半は主に、龍谷大学政策学部及び、兵庫県立大学での非常勤講師と、日本計画行政学会での学会発表を中心に、学術関係の取り組みがメインとなりました。その後は、4月より就任の大和大学社会学部への就任のための資料作りや教材の準備、引っ越しなどの準備に集中し、今年度の幕を閉じました。


教員として

10月より、龍谷大学政策学部及び、兵庫県立大学で非常勤講師として後期の授業を担当しました。龍谷大学では、『グローバルシチズンシップ』として、政治哲学と実社会のまちづくりや芸術活動の関係について、兵庫県立大学では『芸術社会論』として、創造都市・創造産業論、文化政策論、クリエイティブ・コモンズ論…等を中心に社会とアートの関係、伝統工藝からコンテンポラリーアート、サブカルチャーに至るまで、アートをいかにマネジメントし、都市や地域社会に“実装”するかについて講義を行いました。


学会発表・受賞

11月27日(金)、28日(土)には、新型コロナウィルスへの対応から、初のオンライン開催にて行われました日本計画行政学会 第43回全国大会にて、下記2題の研究発表を行い、そのうち1題(発表①)が、「優秀発表賞」を受賞しました。2日間で全46発表中18ノミネートの中から選出された3発表の1つとしての受賞でした。

今年度の大会は本来、東京工業大学 大岡山キャンパスでの開催の予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大防止に関する大学側の対応ならびに、開催時期である11月末時点での状況の不確実性に鑑み、大会役員で検討が行われた結果、オンライン開催となりました。

今般のコロナ禍により、フィールドワークなどもままならず、対面での調査やヒアリングなども困難な中で、それぞれまとめ上げた研究成果を持ち寄り、全国から多くの研究者が参加しました。今回の全国大会は、初のオンラインによる開催にもかかわらず、闊達な議論が繰り広げられました。

今回は下記の二題を発表いたしました。受賞対象となった①の単著での研究報告は、かねてより本会でも注目し、議論を重ねてきた「播磨連携中枢都市圏」に関する研究を深めたものがベースとなっています。

一昨年には、福岡大学で開催された第41会大会にて、連携中枢都市圏において、姫路市で21年秋にオープン予定の文化コンベンションホール「アクリエひめじ」(当時名称は未定)の、播磨圏域内での機能と役割、各市町の文化施設の昨日・役割分担とそのあり方について、本会会員(当時)の橋本英司氏を中心に、立花副代表と月ヶ瀨悠次郎代表と共に研究題目「連携中枢都市「姫路」における文化・産業複合施設のあり方について:Urban Planning in Himeji City with the New Municipal Complex of Theatre and Exhibition Centre」として同学会で発表を行いました。

今回の研究発表では、さらに播磨地域の地域創造性に関して、姫路市の市長公室の中に設置された地方創生推進室との協働で大規模な統計調査と地域創造性に関する計量指標を行い、その結果をまとめました。

また、②のセカンドオーサー(第2著者)として、兵庫県立大学井関准教授との共著で発表したものについては、立花副代表の勤務するルカ・ステインドグラス(株)が主催する文化団体Entre-Nousと姫路市、姫路信用金庫からなる「播磨の物語と古典芸能の会」が二度にわたり開催し、立花副代表自身もスタッフとして参加した、ステインドグラスを用いた実験的な浄瑠璃公演について、その社会的意義と可能性について兵庫県立大学社会学研究室との協働でまとめたものです。こちらの内容は、D・スロスビーの「アートの価値論」についてまとめた序論に、上記催しを事例として、「アートイベントの経営戦略論」として後半部分を加えまとめたものです。

本研究については、兵庫県立大学の紀要に投稿、査読を経て3月に掲載予定です。詳細は本会HPに掲載しております。

発表①
『仮想的政令指定市としての連携中枢都市圏の地域創造性に関する比較考察〜播磨連携中枢都市圏を事例に〜:A Comparative Study on the Regional Creativity of Cooperation Central Urban Area as Virtual Government-designated City — Case Study of Cooperation Central Urban Area of Harima — 』(単著)
発表②
『アートイベントにおける共創戦略:Co-creation Strategy for Art-event』(兵庫県立大学環境人間学部井関崇博准教授との共著)

出版

2月末には、春風社にて約三年がかりで編纂された著者約350人、1000pを超える巨編書籍である『都市科学辞典』(定価税別25,000円)が発売されました。シカゴ学派の流れを汲む我が国の都市社会学の権威が名を連ねている中で、たったの2ページではありますが、9章『市民と文化』の9-2-10『新自由主義と「都市への権利」』の項目を執筆しました。


大阪へ

そして、2019年度末に採用決定していた通り、2021年度大阪吹田の大和大学に新設の社会学部社会学科現代社会コース専任准教授として赴任することとなり、その準備に追われた年度末となりました。また、かねてより申請を続けてきた日本学術振興会の科学研究費助成事業(通称科研費)にも私の研究テーマが採用され、ある程度のバジェットを持って研究活動を行う事が可能になりました。

これらに伴い、4月より吹田市に拠点を移すこととなり、本会の活動にはこれまで通り関わることが困難となったため、一歩退き、本年度をもって副代表の職は辞すこととなりました。21年度は、主に、姫路市文化振興ビジョンや総合計画の読み解き、表現の自由に関する継続調査、など研究面でのサポートを通じて本会にも何らかの貢献が出来ればと考えております。



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