ひめじ芸術文化創造会議 のWEBサイト

シェア

舞台女優・実桜くらら氏とのディスカッション

公開日時 : 2020年07月31日

2020年7月8日(水)、姫路城下町ギルドにて7月定例会議を開催。現役の舞台女優・実桜くらら氏をゲストにお招きし、新施設の活用を中心に様々な角度からお話を伺い、また意見交換を行いました。

舞台女優・実桜くらら氏とのディスカッション

2020年7月8日(水)の7月定例会議では、約90分(およそ半分の時間)に渡ってゲストとのディスカッションを行いました。以下は、その内容をわかりやすく編集したものです。




姫路市文化コンベンションセンターが市外のファンの集められるか

立地条件は悪くないので、チャンスはある

姫路駅のアクセス(新幹線、関西のJR在来線)
姫路駅のアクセス(新幹線、関西のJR在来線)

実桜くらら確かに大阪は比較的多くの公演が行われていますが、それは大阪の人だけで客席が埋まっているというわけではないと思います。大阪がなんとなく関西(もしくは西日本)の人たちにとって集まりやすそうな場所だ、ということもあって他府県から舞台がお好きな人に集まっていただいているとも言えます。

大阪の人が京都や奈良に出かけていくことも良くありますから、(大阪人のわたしがこういうのもおかしなことかもしれませんが)「集まる先」が必ず大阪でなければならないということはありません。

新幹線のアクセスが良い姫路市の新しいホールは、関西・西日本の舞台ファンが集まる場所になり得ると思います。

月ヶ瀬悠次郎新幹線のアクセスが良いという点は、行政側も前面に出してPRしているところ。地元の人が「わたしたちに関係あるの?」と冷ややかな目で見ているのは少し残念なところでもあります。




劇場周辺の環境が重要

実桜ただ、大阪人は食にうるさいところがありますから(笑)、劇場周辺の飲食店・喫茶店は必須です。必ずしも地元の名産や高級なものを出さなくても良いと思います。居心地が良くて、それなりに美味しいものであれば、全国チェーンの店でも構わないのです。

奈良や京都の劇場に出かけると、劇場周辺の飲食店事情が弱いと感じます。どこかしらに飲食店はあるのかもしれませんが、劇場から少し離れていたり、観劇が終わって劇場から出た時間帯に営業していなかったり。

立花晃海外だと、普通のオジサンがオペラを観て、そのままパブみたいなところで「あのアリア良かったなぁ」みたいな話で朝まで盛り上がるようなシーンも観られます。そういうのが舞台の楽しみの一つでもあり、そこから文化が生まれてくるようなものでもあります。

月ヶ瀬この点は我々の会でも良く議題に上がったところでもあります。劇場が24/7で(常時)稼働しているわけではないので、常設の店舗が設置できるか(採算が合うか)というところが一つの課題。

立花大ホールでたまにイベントが有るとき以外は無人の箱……というのが良くないので、中小ホールや会議室などの活用も並行して考えて行かなければなりません。

実桜市民の利用促進は大事だけれど、「市民だけのもの」という独り占めの意識では利用の幅が広がりません。むしろ、外の人に気持ちよく使わせることで儲けてやろう、という視点で駅から劇場までの経路を含めた街全体の演出が必要になってくると思います。




公演を行う側にとっての利便性も重要

実桜公の施設では、どうしても「お役所仕事」になりがちです。大阪にも公営の劇場施設がありますが、安さで補えないほどに使い勝手が悪いせいで使われないことも多いです。例えば、会場利用のコマ割りが厳密で「1時間早く入らせてもらえるなら借りたいのに」というような状況でも「駄目です」と。まるで、文句があったら使わなくて結構というような態度にも思えてしまいます。もう少し商売っ気というか、交渉ができるようだとありがたいのですが、なかなか難しい。もちろん、ある程度ルールを厳密にしておかないと、不公平なことになってしまうのはわかりますが……

それと、さっきの話とも関連して……大阪にはホールがあちこちありますが、他府県の方に集まっていただきやすい場所が、必ずしも大阪人が行きやすい場所とも限りません。外から来られる人が楽しむ場所と地元の人の楽しむ場所が分かれている部分もあるかもしれませんね。その点、お話を伺った感じでは、市民にとっても外からの人にとってもアクセスの良い場所にできるというのは、素晴らしいことだと思います。

立花「劇場施設は誰のもの?」というテーマも、我々の間で何度も議論に登場しては、ナカナカ答えが出ないままにしてきたものの一つですね。




できるだけ稼働させることが大切

シーズン毎に増減する営業収益(イメージ)
シーズン毎に増減する営業収益(イメージ)

実桜(ホールの利用という点では)劇場はたとえ赤字であっても可能な限り常に稼働しているべきです。そうでないと、どんどん使われなくなって行きますから。ニッパチ(2月・8月の興行が奮わない時期)でも、何らかの公演を多少無理してでも入れておくべきです。

月ヶ瀬中小の劇団に大ホールを使わせるような仕掛けも提案したいところです。コロナで客席を減らして興行を行うような時代ですから、「客席を埋めるのが難しい」という理由で今まで大ホールを使わなかったような劇団も、「大ホールの演出」「大ホールの芝居」にチャレンジするチャンスかもしれません。小ホールやアトリエ公演とは演出技法も芝居も全く異なるはずですから、良いチャレンジになるはずです。




利益を上げるところ、投資するところ

いくつかのキラーコンテンツを持つこと(イメージ)
いくつかのキラーコンテンツを持つこと(イメージ)

実桜そうは言っても、赤字のものばかりでは先行きが成り立ちませんから、いくつかのキラーコンテンツが必要です。確実に大きな黒字を生み出すようなコンテンツをいくつか持っておいて、そこで得た収益で赤字のイベントを行うのです。なかなか役所の仕事は、全てのコンテンツでまんべんなく黒字にしようとする傾向がありますが、はっきり言って芸術がお金になることは滅多にありません。

立花行政は、基本的にそういうのが苦手な傾向にありますね。商店街再生などでも、常に全方位の成長モデルでやろうとするので失敗する。ここで儲けたものを、こちらに投資して……というのがナカナカできない。

芳賀一也観光の分野では、そのあたりを省みてDMOやDMCという考えが生まれています。ただ、いまのところ行政が開く市民を交えた会では、個別の案件の議論ばかりで総論・全体論が上がらない。個別の事柄だけをみて「これで儲けるべきですか?」と聞かれれば、市民も「はい、そうですね」となるので、結果全ての案件が「これで儲けるべき」という発想で進められることになるのです。

実桜お金儲けとしての《芸事》と非営利の《芸術》という線引きをしても良いくらいに、それぞれを明確に分ける意識を持っていただいたほうが良いです。《芸術》と名が付けば赤字でも気にしなくていい……というのは違いますが(大阪の橋下改革下の文楽のように自力で頑張ろうとする姿勢も大切です)、単に赤字だからという理由でカットしていては、ほとんどの芸術はなくなってしまいます。




文化振興のために

プロデューサー不在?

実桜先程のお話の中で「プロデューサーが居ない」ということが話題に上がりましたが、プロデューサーという人たちは居ます。居ないわけではない。ただし、ほとんどの方が東京を中心に活躍していて、ギャラが高いのです。少ないから高いのか、高いから少ないのか……はわかりませんが、高いなりに成果を出せる人は居ますから、劇場オープニングのような「ここぞ!」というときには惜しまずに投資するべきです。

某有名アーティストのコンサートを手掛けた方は、最寄り駅から会場までを演出しました。経路をデコレーションするだけではなく、物販のブースへの誘導も含めて「客が気持ちよくお金を落とす」環境づくりをすることで、イベントを大成功に導きました。

月ヶ瀬戦力や資本の逐次投入が愚策なのは、古来から常識ですからね。空間演出は、「見た目の盛り上がりのためではなく、儲ける場所を作るため」というのは、よくわかります。力のある外部の人に丸投げ……というのがちょっと気になるけれど。

実桜外部の人に頼むにしても、中心になる人物が必要ですから。

芳賀力のある人を制御できる「プロデューサーのプロデューサー」が必要になってくるのかな。

実桜中心になる人は、地元の「覚悟と情熱」を持った人が良いかと。もう、討ち死にするくらいの情熱で外部の人を惹きつけるような……

一同芳賀さん、骨は拾いますから。




芸術と観光の切り離し

実桜芸術と文化・観光を必ずしも一体的に考える必要はないのではないかな、と思います。若い人は、文化・教育・地域・観光……という言葉に対して重たい又は自分には関係が無い縁遠い、関係が無いものだと思ってる人が多い気がします。でも、インスタ映えのためなら原宿に行ってクレープを買うわけです。もっと、軽いものにしないと若い人は参加しづらいでしょうね。

一方で、年配の人のほうがお金を沢山使ってくれるということもありますから、そういう人たちからお金をもらう仕組みを作ることは大切だと思います。

芳賀姫路城のような文化財を保護するための費用を賄うために観光で儲けていく必要があるので、どちらかといえば観光行政の中に「収益のための重い物」と「賑やかしのための軽い物」という発想が必要なのかもしれません。

立花行政が若者向けのコンテンツを作ると大体はサムい感じになるので、チャラくて面白いコンテンツを外部委託できれば良いのですが。

実桜大手のサブカル系イベントや(大きなお友達向け)ヒーローショーなどは、収益のためのイベントとして学ぶべきところが多いですよ。来場者に「気持ちよくお金を使わせる」という点で徹底していますから。




黒字コンテンツ(芸事)の役割と赤字コンテンツ(芸術)の責任

実桜そういう収益事業で儲けたお金を使って(地元の幼稚園にバスを寄付するだとか、危ない土手にガードレールを付けるとか)地域に還元するような意識が大切ですね。どうしても赤字にならざるを得ない芸術の支援に使うとか。余談ですがコロナ自粛の時期には、あまり社会貢献してなさそうな人ほど社会や政治に文句ばかり言ってるような印象でした。

月ヶ瀬「コロナ支援が遅い」という人が確定申告もちゃんとしてなかったり。

実桜しばらく食べていけるくらいの蓄えがありそうな芸能人が、率先して自分のことを可哀想だと言っていたり。むしろ彼らは困っている若手の面倒を見てあげなければならない立場だと思うのですが……。

立花某有名演出家などは、コロナ前には「IT化が進んで仕事を奪われることを嘆く暇があったら、建設業者はパソコンでも学んで転職すれば良い」なんてことを言っていたのに、コロナ自粛が始まると「演劇人は演劇しかできない生き物だ。国が劇場を守れ」なんて言い出す始末。私はてっきり、率先してUberEatsのバイトでも始めるのかと思っていましたが。

一同(失笑)


実桜(話を戻しますが……)一方、芸術は赤字で良いと言いましたけれど、それにしても最低限、きちんと「芸術」と呼べるレベルに昇華させる責任があると思います。作品のなかに政治主張が盛り込まれたり、思想・宗教表現があっても全然構わないと思います。ただし、観た人がちゃんと「面白かった」「観に来て良かった」と思えるものであれば。観るに堪えないものもチョイチョイ……

立花説教臭いだけのお遊戯会が……

芳賀歌舞伎は、悲劇でも演出で明るく楽しく終わらせたりします。

実桜歌劇もそういう演出が多いです。興行(芸事)としてやる場合は、後味良く終わることが特に重要になりますね。




有名人を使う

実桜地元の面白いストーリーや文化を興行として成り立たせるためには、その文化(歴史とか宗教とか)の専門家を呼んで「ほんまもん」をやるよりも、ちょっと詳しいような有名タレントに依頼する方が人は集まります。「地元出身のタレント」とか「その道のすごい人」とかにこだわり過ぎるあまり、来場者にとって楽しいかどうかが後回しになってしまうことが多いのです。

「うちのこれ、凄いんですよ」と自分でいうより、「あそこ凄いよ」と外部の有名人に言ってもらうほうが良いです。場合によってはお金を使ってでも、そういう機会を作ったほうが良いです。




芸文会議は凄い(?)

月ヶ瀬じゃあ、さっきご飯をごちそうした分で、「姫路の芸文会議、凄いです」ってあちこちで言いふらしてもらってもいいですか?(笑)

実桜いやいや、なかなか大阪でもこういう活動をされている団体はありませんから、凄いと思いますよ。今日は面白い話を沢山聞かせていただけましたし、とても楽しかったです。また来たいです。本当に、新幹線が停まる駅の近くにこんな立派な施設ができるというのは大きなチャンスですから、積極的に活用してください。

一同今日は、遅くまでありがとうございました。


実桜くらら氏には平日の夜にもかかわらず、また月ヶ瀬よりの突然のオファーにもかかわらず大阪より駆けつけていただき、貴重な現場目線のご意見をご披露いただきました。

今後も当会議では、折に触れてゲストを交えた(公開)ディスカッション会を行いたいと思います。

出席者(敬称略)
実桜 くらら(ゲスト:舞台女優)

月ヶ瀬 悠次郎 立花 晃 高巣 恵 伊勢田 駿佑
他3名(会員)

芳賀 一也(顧問)
文責
月ヶ瀬 悠次郎